成人矯正とは
成人矯正とは、顎の成長発育期を過ぎた方を対象とした矯正治療を指します。一般的には、12歳前後から開始する矯正治療の総称です。
以前は、小学校高学年から高校生くらいまで、学生時代に行うイメージが強かったですが、近年では30代から60代まで、年齢を問わずに矯正治療を受ける方が増えています。
また、虫歯や歯周病の治療と合わせて、かみ合わせや見た目の改善を目的に矯正治療を行う方も非常に多いです。特に治療箇所が多く、全体にわたる場合には、矯正治療を併用することが推奨されます。
矯正治療の主な目的は、上顎前突(出っ歯)、下顎前突(受け口・反対咬合)、開咬(上下の前歯の間に空間があいている)、噛み合わせのゆがみ、叢生(歯列のガタガタ)など、見た目や機能の改善にあります。また、顎と歯のサイズの不調和や顎の骨のずれを改善し、歯並びや噛み合わせを整えることも重要な目標です。
矯正治療のメリットは、見た目の改善や咬合の機能改善だけではありません。
最大のメリットは、虫歯や歯周病のリスクを低減し、口腔内の清潔さを保つことで、全身的にも健康的な環境を作り出すことにあります。
以下では、成人矯正のさまざまな種類について詳しく説明させていただきます。
マウスピース矯正
マウスピース矯正とは、まず患者さんの歯型を取り、レントゲンやCT撮影を行います。このデータをコンピューターに取り込んで、現在の歯並びから理想的な歯並びまでどのように移行するかをシミュレーションします。シミュレーションの結果に基づいて、必要な枚数のマウスピースを作成します。患者さんは1週間または2週間ごとに新しいマウスピースに交換していくことで、徐々に歯並びを整えていきます。この方法で、理想的で美しい歯並びを実現することができます。
当院では、『インビザライン』と『スマイルトゥルー』の2種類のマウスピース矯正を提供しています。どちらも、基本的なシステムは同じで、薄い透明な素材で作られたマウスピースを使用します。このマウスピースは、自分で簡単に着脱可能で、装着していてもほとんど目立たないため、周囲の人に気づかれることが少なく、日常生活に大きな影響を与えません。さらに、食事の際には取り外していつも通り食事を楽しむことができ、歯磨きも通常通り行えるため、口腔内を清潔に保ちやすいというメリットがあります。
マウスピース矯正は、特に目立たない矯正治療を求める方にとって非常に魅力的な選択肢です。また、快適な装着感とライフスタイルへの影響が少ないことから、多くの芸能人や公の場に出る機会の多い方々にも選ばれています。
テレビで芸能人の口元をよく観察していると、彼らがこの矯正治療を受けているのを見つけられるかもしれません。
※インビザラインは小児でも可能なマウスピース矯正法です。
マウスピース矯正ならではのメリットとデメリット
メリット
- 透明で目立たない
- 薄いため不快感が少ない
- 自分で取り外すことができる
- 来院回数が少ない(インビザラインは)
- 金属アレルギーの方も使用できる
- 痛みが少ない
- 1~2週間で新しいマウスピースに交換するため清潔
デメリット
- 適応外の場合もある
- 飲食時には取り外す必要がある
- 自分で取り外すことができる
- 効果、仕上がり、期間が本人の過ごし方で左右される
ワイヤーブラケット矯正
表側(唇側)矯正
ブラケットワイヤー矯正は、歯に力を加えるための装置であるブラケットを歯の表面に接着し、そこにワイヤーを通して歯を動かす矯正治療法です。この治療法は矯正治療の中でも歴史が古く、最も実績と信頼のある「王道」と言える方法です。
以前は金属色のブラケットが主流でしたが、近年では透明で目立ちにくいクリアブラケットが普及しており、見た目の負担が軽減されています。
ワイヤーブラケット矯正は、装置を自分で取り外すことができないため、確実に矯正が進められるのが特徴です。これにより、複雑な歯並びの矯正や微調整が可能となり、仕上がりに対する満足度が高い点が最大のメリットです。
ワイヤーブラケット矯正ならではのメリットとデメリット
メリット
- 微調整ができるため、細かい歯の移動は得意
- 適応症の幅が広い
- 装置を自身で取り外せないため、強制的に矯正をすることができる
デメリット
- 装置の間が不清潔になりやすいため、虫歯・歯周病のリスクが高まる
- マウスピース矯正に比べれば目立ってしまう
- 1か月に1回は調整に来る必要がある
- 金属アレルギーの場合は使用できない場合もある
ワイヤーブラケット矯正
裏側(舌側)矯正
裏側矯正(舌側矯正)は、ワイヤーブラケット矯正の一種で、歯の裏側にブラケットを取り付けてワイヤーを通す矯正治療法です。矯正装置を歯の裏側に取り付けることで、見た目に目立ちにくくなるのが特徴です。
ただし、裏側にブラケットが付くため、舌が傷つきやすくなったり、話しづらくなったりすることがあります。
また、咬み合わせの状態や舌の大きさによっては、この治療法が適用できない場合もあります。
さらに、裏側矯正は技術と材料の面でコストが高くなる傾向があります。
裏側(舌側)矯正ならではのメリットとデメリット
※ 基本的にはワイヤーブラケット矯正と同様です
メリット
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- 表側(唇側)矯正に比べて目立たない
デメリット
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- 上の歯に下の歯が噛みこむため、そもそも適応できる方が少ない
- 話をしにくい、舌が傷つきやすい
- ブラケットの脱離等の細かいトラブルはやや多い傾向
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※裏側(舌側)矯正はお口の中の状態次第では適応が難しい場合も多くあります。お口の状況次第では専門にされている先生へご紹介をする場合もあります。
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床矯正(SHアライナー矯正)
床矯正とは、歯型取りをして、患者さんのお口に合った矯正用の床装置を作成し、それを装着して1か月に一度調整することで、徐々に歯並びを整える矯正治療法です。
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床矯正というと、小児を対象とした治療を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、当院で導入しているSHアライナー矯正は、取り外し可能なスプリング付き床矯正装置を使用する新しい治療法でどの世代に方にも適応可能です。
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この装置は、食事やブラッシングの際に取り外せるため、虫歯や歯周病になりにくく、清潔さを維持しやすいのが特徴で、食事もこれまで通り楽しむことができます。
使用方法はシンプルで、毎日8~10時間程度装着するだけです。
お子さんの場合は、夜間に寝ている間だけ装着することが多いです。
SH療法は、子どもから中高年の方まで幅広い年代の方に使用できる治療法です。
また、この治療法は、いびき、歯ぎしり、睡眠時無呼吸症候群の治療にも役立っています。 -
SHアライナー矯正ならではのメリットとデメリット
※ 基本的にはマウスピース矯正に近い
メリット
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- 自分で取り外すことができる
- マウスピース矯正に比べて装着時間が短い
デメリット
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- ワイヤーブラケット矯正やマウスピース矯正より治療期間がかかる
- 気になるところをピンポイントで移動させることには向いていない
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部分矯正
部分矯正とは、1~6本程度の歯を部分的に整える矯正治療です。出っ歯やすきっ歯、一部がガタガタしている歯など、御自身が特に気になる部分を集中的に治療します。
また、かぶせ物をする前に整えたり、清掃しやすい状態にするため、あるいは歯を保存するための矯正治療(挺出:エクストリュージョンや整直:アップライト)も、部分矯正に含まれます。
全体的な矯正治療には費用と時間がかかりますが、部分矯正はその両方を抑えつつ、特に気になる部分を重点的に治療できる方法です。治療方法としては、ワイヤーブラケット矯正とマウスピース矯正の二つが選択肢としてありますが、マウスピース矯正は費用が高くなる傾向があります。
ただし、気になる部分だけを治療したい場合でも、全体的な矯正が必要になることもあります。
※部分矯正には歯を保存するためのエクストリュージョンやアップライトといった歯を保存するためにおこなう治療も含まれます。
他院にて『抜歯が必要だ』と、言われた歯でも残せる可能性があります。
実際の治療ケースもお見せできますので、一度セカンドオピニオンとしてご相談ください。
アンカースクリュー矯正
アンカースクリューとは、歯茎に小さなネジを埋め込んで行う矯正治療の一部です。このスクリューは、単独で使用するものではなく、ワイヤーブラケットを用いた矯正治療をサポートするために使用されます。
矯正治療は、歯に力をかけて動かすものですが、アンカースクリューを歯茎に固定することで、動かないアンカー(いかり)の役割を果たし、より効率的かつ短期間で治療を進めることが可能です。
外科矯正
外科矯正とは、歯並びが悪くなる原因に骨格的な問題が含まれる場合に必要となる治療です。歯並びの悪さを指す「不正咬合」には、「骨格性」と「歯槽性」の2種類があります。通常、骨格性の不正咬合は、一般的な矯正治療だけでは改善が難しく、あごの位置を手術で治療する必要があります。
簡単に言うと、外科矯正は歯列矯正とあごの手術を組み合わせた治療方法です。骨格的な問題が原因の場合、矯正治療が保険適用となることがあります。また、外科的な手術が必要になるため、大学病院などの信頼できる医療機関と連携しながら治療を進めますので、どうぞご安心ください。
審美矯正
審美矯正は、矯正装置を使った治療とは異なります。
審美矯正は、歯を削ったり抜歯を行った後に、かぶせ物やインプラント補綴を使って口元を美しく整える治療方法です。つまり矯正ではありません。
審美矯正のメリットは、矯正治療に比べて治療期間が短く済むことです。
特に、もともと多くの歯にかぶせ物やつめ物があったり、大きな虫歯や残せない歯が複数ある場合には、非常に有効な方法と言えます。
一方で、デメリットとして、健康な歯がある場合でも、歯を削ったり抜歯したりする必要があるため、歯に負担がかかることが挙げられます。
また、かぶせ物や人工物で補うため、長期的に見てリスクが伴うことを理解しておく必要があります。
当院では、複数の歯にかぶせ物が既に入っていて口元を改善したいと考えている方には、矯正治療を行った後にかぶせ物を装着するか、かぶせ物のみで対応するかを検討しています。治療期間や費用については、カウンセリングを通じてしっかりとご説明し、患者様に十分に考えていただいてから治療を進めます。
審美矯正を検討されている方にとって最も重要なのは、矯正治療を含めた相談を行い、長期的な視点で審美矯正が最適な選択であるかどうかを慎重に検討し、リスクとメリットを天秤にかけて判断することです。